思い出のスーベニア、ガロ<3>

思い出のスーベニア、ガロ<2>より


日本へ

帰国当日。

ほぼ朝一番のフライト。

真っ先に運行状況をチェック。

まずはリスボンまでは飛びそう。


チェックインカウンターでは地上乗務員が

あなたの最終地はいったいどこなのか聞かれ

東京、と答えると目をまん丸にして、

リスボン行って?と驚きながらも隣のカウンターの乗務員に

みてみてアリタリアの解決方法、

ミラノ、リスボン、ローマ、東京よ!などと笑っている。

こちらも笑いたいところだけれど、せめてローマに着くまで

今は笑えない。



東京までの道のりはまだまだ(さらに)遠い


飛行機はリスボンに向けて飛んだ。

窓から見たミラノの朝焼けはきっと忘れない。


数時間後にはまたイタリアに戻るのだけれど。




朝焼けに見送られ


ベルト着用サインが消えた頃、改めてチケットを眺めてみる。

どうせリスボンへ行くなら空港のカフェで

名物エッグタルト食べようと少し気持ちの余裕がでてきた。

空港の滞在できる時間を見ていると

イタリアとポルトガルに時差があるのでは、と思い始めた。

調べるとやはり1時間の時差。


となるとエッグタルトどころではない。

ゲートへ直行だ。

それどころか問題はローマでのトランジット。

搭乗時刻に間に合っていない…。


確かローマの空港はターミナルが新しくなってから

日本方面のゲートまですごく遠くなった記憶がある。

シェンゲン協定国経由なので出国手続きもこれからローマにて。


ローマで足止めか?


ざわざわした気分をよそに、まずは体力をつけようと

出てきた機内食は完食。

やがて朝の車のラッシュのすごいリスボンに飛行機は近づいていた。



Bom dia!

万事休す。


勝手のわからないリスボンの空港。

広場のような待合スペースでゲート案内を待つ。

少しだけ時間があったのでこの旅の「思い出」を探しに

待合に面したお店に入る。

ポルトガルらしい小さな陶器でできた雄鶏が目に入る。

続く旅の幸運を祈りながらひとつ買った。


なにせポルトガルはこの時期、ミラノからのフライトを受け入れてくれる

希少な国であったわけで。

同国のローマですらミラノのフライトを絶った。


これにはイタリア南部の医療体制の脆弱さをつかれないように

するためのやむを得ない事情があったにしても、だ。


やがてゲートが案内されるも、ここでフライトの遅延。


もうだめだ。

でもとりあえずローマまでは行こう。

あとはそこで考える。


リスボンを遅れて飛び立ったローマ行きの飛行機は

こちらの心配をよそに乾いた色のサンドベージュのスペイン上空、

紺碧の地中海、と美しい風景の上を飛んで行った。


サルデーニャ島を超え、イタリア半島のトスカーナ上空に入ると

機体は南下してローマの空港へと近づいて行った。

ミラノからローマ、たった45分のフライトを

リスボン経由で7時間。


飛行機の機体の影が見えてきた。

空港は近い。

でもこの時、チケットにある搭乗時刻はとっくに過ぎていた。





ローマの東京行きのターミナルは遠い。

しかも10キロの手荷物と重たいカメラ。

とにかく走ろう。飛行機から降りたらとにかく走ろう。


久しぶりのフィウミチーノ空港は驚くほど人がいなかった。

人の流れがないので、サインを見ながら走っている。

人のいる方に曲がると、人は井戸端会議中の清掃のスタッフで

こっちじゃないのよ、あっち!と4人全員で大きな身振りを加えて

教えてくれるところがさすが。

ありがとう、と叫びながら出国手続きへ。

こんなに走ったら体温も高いであろうと緊張しながらの検温。


出国手続きをすませたところで、また走る。

と、放送で名前を呼ばれているのが聞こえてきた。

でもゲートの番号はまだ見えない。

突き当たりのゲートまでは数百メートル。


とりあえずいることをアピールするために

Eccomiiiii!!! います~!と叫びながら走る。


もう喉がからからである。


地上職員は冷静に、他にも日本人らしき人が

同じフライトにいなかったか聞いてきた。

らしき方がいたのでそう答える。

どうやら地上職員も、誰をどの便にどう振り分けたかを

聞かされていないので、誰をどこまで待てばいいのか

わからないとのことだった。

あの数日間のアリタリアのてんやわんやは想像に難くない。


座席についた。

ほどなくして扉は閉まり、飛行機は滑走路に向けて動き出した。


とりあえず日本には帰れそうだ。


と思ったのも束の間で、飛行機は駐機場に引き返した。


「日本政府の要請により北イタリアに2週間以内に滞在歴のある

日本国籍以外の入国ができなくなりました」


そうだこの飛行機が飛んで上空にいる頃、日付が変わり

まさにこのフライトに乗っている人はその該当者になるのだった。

それは乗客のみならず乗務員もである。


最初はみな勝手がわからず、全員が降りるのかと思い

こちらも降りる用意をした。

アリタリアのスタッフもその日から適用されるルールで

勝手がわかる由もなかった。

地上のスタッフとやりとりしながら

まずは、日本国籍ではない人が飛行機から降りることとなった。

あまり気持ちのよいものではなかった。